何処か歪んだ人間だということは知っていたよ。 軍師なんだ、一般的な脳回路じゃ一般的な軍略しか出来やしない。 その才能はこの国の為に役立てて欲しいと誰もが願っているんだ。 それを、お前さんは…
「や、ちょ…ちょいとお前さん。それは…」 「何故ですか?私は貴方の為にここまでしたのですよ?貴方が口約した…「はいはい!わかっとるよ!!」
まったく。こういう時に限ってやる気を出して、目にも止まらぬ速さの仕事をこなすのだからまいる… 何しろ、今回の口約はあっしにとってとんでもなく不味い方向の内容だ。 軽く冗談で言った、部屋の片付けと執務を代わりにしてもらいたいという言葉を真に受けた諸葛亮が、もし一日で片付いたら一つ言う事をきいて欲しいということ。 何やら途轍もなく嫌な予感がするのは気のせいじゃないのが哀しい。 さてさて。一体どんな願い事を言われるのだろうかねぇ?
「それで、お前さんの願いって?」 「それはですね…」
「…何が哀しくて、深夜の執務室に隠れなきゃいけないんだろうねぇ…」
そう、諸葛亮の願い。 それは予想だにしない内容だった。
運動不足解消の手伝いをしてほしいから、鬼ごっこをしようという。 そんなの、昼間に訓練をご一緒させて頂けば良いだろうと思った。勿論。 しかし、これが諸葛亮の願いだと言う。 仕方なしに始まった深夜の鬼ごっこ。
鬼は自分がやる、と言い出したのであっしは取りあえず逃げた。 逃げると言っても、ここは本拠地。勝手知ったる場所だ。 隠れられる場所なんて限られている。
「さて。どうしたものかねぇ…」
深夜ということあって、足音が一歩一歩響く。 下手に歩くと居場所が知れてしまう。
「こりゃ心理戦かな?」
全く以って疲れることこの上ない。
取りあえず自室に入り、奥の部屋に潜り込む。 と、その時。
コツン、コツン…
足音だ。 何故か胸が高まる。 緊張しているのだろうか… 段々近づいてくる…
コツン、コツン…
気配が近い。 手に汗が溜まってきた… 早く、早く通り過ぎてくれ…
コツン、コツ…
止まった?
ギィ…
「士元?」
諸葛亮が入ってきた。 何処か声が低く、恐怖を煽る。
「士元、いるのでしょう?さぁ、出てきなさい。」
部屋の戸を閉める音と共に聞こえる足音。 あっしは反射的に寝台の下に隠れた。
心臓が早鐘状態だ。 苦しい、怖い… 鬼ごっこの特徴的な心理状態になっていた。
そして…
「ここにいるのでしょう?」
ついにあっしのいる部屋に入ってきた。 如何するべきなのか。 ここで出て、おどけた様子で終わりにすればいいのか。 しかし心の何処かで負けたくないと思っている。
「…」
あっしは後者を選んで、意地でも出るもんかと心に決めた。
諸葛亮の足が段々こちらに近づいてくる。 まっすぐに、まるで居場所が分かっているかのように…
「…士元?」
諸葛亮の声が虚しく部屋に木霊する。 早く、早く出て行ってくれ…
何故だかこんなにも焦りを感じる。 どうしてこんな…
「み、 ぃつけた…」
「っ!!」
一瞬、心臓が止まったかのような感覚。 気がついたら足首を引っ張られ、引きずり出されていた。 振り返れば、口元に笑みを浮かべている諸葛亮の顔が、仄かに見える。
「み、見つかっちまったね…あっしの負けかい…」 「そうですね。私が貴方を見つけられない筈がないのですから。」 「……?」
一体、どういう…?
そう言葉にしようと思った瞬間、身体が浮いて寝台の上に落とされた。 そして、ゆっくりと覆いかぶさってくる諸葛亮…
「しょ、葛りょ…?」 「私の所有物である証の、私の香りが貴方の体内から発せられていますからね。」 「…っ!」
それは…まだ残っていたのかい?全部出したつもりだったのに…
「昨晩の士元も可愛かったですよ。今夜も昨晩みたいに、啼いてくれますか…?」 「っ諸葛亮!あっしは…!」 「愛してますよ。」 「―――!!諸葛、亮…」 「貴方が手に入るなら、総てを捨てても構いません。地位も、国も…」
首筋に諸葛亮の唇が這う。 熱い吐息が、熱烈な言葉と共に吐き出される。 常軌を逸したその発言に囚われて、動けない。
「諸葛亮…今夜は勘弁してくれよ…。昨日ので、あっしはもうヘトヘトだよ…」
ここ毎晩、明け方まで求められて身体が悲鳴を上げていた。 あっしの言葉に、何が嬉しいのか笑顔になった。
「士元の心も、身体も、総て欲しいのですよ。どんな卑怯な手を使っても、ね。」 「お、お前さん…何時からそんなに黒くなったんだい…?」 「元から士元に対してはこうでしたよ。…さぁ、お喋りはここまで。これからは沢山乱れて下さい。」
言うや否や、馴らしもしていない秘部にいきなり熱い塊を押し付けられた。
…まさか…
ぐ、ちぃ…
「ひ、ぃあああああぁああっ!!!」 「…っ、く…」
世界が痛みで真っ白になる。 慣れてしまった身体は例え痛みでも諸葛亮を受け入れる。 鬼に捕まった者は、こうやって食べられてしまうのが御伽噺。 あっしも、鬼に卑怯な手段で捕まった哀れな餌って訳だ。 あぁもう。まだ夜は更けたばかり… 明日も軋む身体を鞭打つ日になるのか…
「士、元…美味しい、ですよ…」
「はっ、はは…っ!光栄、だね…。――ぅああ!!」
鬼に美味しく頂かれたこの身体は、永遠に鬼のモノ…
****** お題「鬼ごっこ」より リハビリ諸ホウ。敢え無く撃沈。
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