それは本当に突然で 拡がってゆく血潮と、狂い嗤う迫り来る三成の姿で世界は閉ざされる
光と闇が入り混じる黄昏時 侵食してゆく闇と足掻く光 まるで今の我らの立場のようで、口元が歪む そう。総てが上手くいっている。何の狂いも無く、澱みも無く 不安要素と言えば、我らが凶王を何処まで繋ぎ留められるか、だ 今にも仇である家康に喰い掛かろうとしている 如何にか抑えてもらわねばならない。今はまだ太陽を地に堕とす時期ではない 元々感情を抑えず表現する言葉が苦手な三成 其れを重々理解している家臣達だが、其れでも機嫌が悪い時は手当たり次第殴り斬られては恐怖に怯えている 或る意味、良く出来た家臣だと熟々感心する そんな家臣達なのだ。三成に楯突き進言する者等居はしない 大丈夫。総ては上手くいく
血の様に染まってゆく空と様々な生き物の空気を纏った風が実に気持ちいい まるで我が心境を示しているかのようだ
ふと、血の香りが漂ってきた また三成が癇癪を起こしているのだろう やれ、止めにいってやろうかと輿を手元に寄越そうかと思った矢先
「形部」
驚いた事に三成が幽鬼のように襖を開けて現れた 何時もは五月蝿い位音を立てて来るのだが、今回は音を消してきたのだろうか 其れにしても随分な様だった 夕日に反射し美しく映えている白銀の髪は所々赤黒く染まっていて、藤色の着物は血で濃い紫紺へと変色している どれだけの血を浴びれば此れ程迄に染まるのかと言うほど、三成は血塗れだった 右手には鞘に収まっていない血に塗れた愛刀、左手には気絶しているのか家臣らしき者が首根っこ掴まれている 此処まで確認して、漸く三成の表情へと視線を移す
「――っ、」
ひゅ、と息が詰まる 三成は、嗤っていた 端整な貌が見事に紅で濡れ、夕日に映えて其れがまた一層濃くなる 瞳は我へと向けられてはいるが、一体何を見ているのか 緩く歪む口元は何を紡いでいるのか 呼吸する事すら忘れる程、我は驚愕していた 一体、何が遭ったというのだろうか?
「み、みつ、なり…如何した。何が起こった?」
「形部。安心しろ。もう恐れる事は無い」
「…?」
「大丈夫、これでもう…貴様を危惧させる要因は無くなった」
「…何を…、――!」
此処まで聞いて、漸く何かが理解した 三成は、我を疎う者達家臣を殺してきたのだと そしてきっと、此の目の前に居る掴まれている者も其の道を辿るのであろう 果たして今此の屋敷に何人の命が繋いでいるのか 死臭を纏った凶王を前にして在り得る筈の無い恐怖が込み上げる 之は、何だ 夢か、現か
「形部」
「っ!」
呼ばれた声は此の場には合わない優しい質なのだが、何処か狂気を孕んでいる ごとん、と重い音を立てて人が倒れ、次いで刀が畳に刺さる音がした 本能で身を捩って三成から逃れようとしていたのを気付かれたのか、三成が肩を掴んで来た ぎり、と骨が軋む
「や、やめよ!三成、はっ、離しやれ…っ!」
「何を怯えている形部?何故私から逃げようとする?」
「に、げてなど…、痛むわ、離しやれ」
「許さないぞ、形部。私から逃げ拒む等絶対許さない…!」
勢い良く押し倒され、背や後頭部を打ち当たった 痛みが全身を襲うより三成の行動への恐怖が勝る 我に対し手を上げることは無かった為の慢心を今は悔やむ 我は我武者羅にもがいた
「いい加減にし…っ、ひぃ!?」
腰帯を一気に解かれ、包帯で巻かれている体躯を曝される 何を、何をしようとしている? 訝しげに三成を見ていると体躯を押し付けて来て密着度が増す 其処で感じた、三成の熱情 其れは我のに擦り付ける様に主張を示している まさか。此の場で三成は我に同衾を求めているというのか?
「っみ、つな、り…ぬしは…」
震える我を、三成はあの赤い目で見下ろして美しく笑った
「ぅあ゛、ぁああ!!ひぐ、ひィッ!」
「っは、ぁ…ぎょ、うぶ…」
包帯も着物も総て取り払われた裸体 病で爛れた肌に三成は狂ったように口付けてきて、その間も我の体内へと深く刻み込んで行く 既に数回注ぎ込まれた精液は一度も抜かれず、腹は膨れ異形を見せている 我が出すそれはもう空に近いのか殆ど色も無く量も無い 其れでも三成は未だ熱も硬質もあり、我の体躯と精神を蝕む 傍からすれば睦み合いだが、我にとっては内臓から食い破られる拷問に近い 仰向けに両足首を掴まれ大きく開かされる 互いの体液、精液が此れでもかというほど皮膚を汚していた
「ぐぅ、み、みつ…もぉ、無理…、よ…ッ!」
「まだだ。まだ満足出来ない…もっと私の愛情を、注ぎ込めねば…!」
「ひぁ!あああ!く、かは…ぁああ゛!!」
「…っく…、は…」
揺さ振りに合わせて膨れ上がった腹が音を立てて揺れる ぐちゅ、ぷちゅと水音が響く 許容を超えた精液が臀部に流れて行く感覚 荒れ狂う獰猛な瞳は快楽に浸っていて、その熱が我へと流れ込んで来る感覚 その快楽に、我のは微かな精を放った 視界も感触も全部が我を狂わしてゆく
「もう、もう入らぬ…我の、腹が、破れるわ…ぁう!」
「何を言う形部。もっと注がねば、孕まぬだろう?」
「…っな、なに…を、言うて…」
涙で歪んだ三成が、歪んで哂っている 三成の手が我の萎えたモノに伸び、握り潰さんばかりに締め付けてきた
「痛っ…三、成…?」
握ったまま挿入したまま三成が身を寄せてきて覆いかぶさる 視界一杯に、暗い闇に沈んだ悦を灯した三成が占める あぁ、なんて恐ろしい 逃げる隙間も泳ぐ視線も総て奪われてしまう 一度舌を絡ませる口付けをして浸る唾液を其のまま頬へと流し、耳元に舌を這わせて低い声で囁く
「此れはもう、必要ない。形部、貴様は私の女となるんだ」
「…は…?」
「もう此れでは快楽を得られぬよう、仕込んでやるから。そうだな、斬り落としてしまおうか…」
指を絡ませる我のモノを引っ掻く様に爪を立てる 加減の無い痛みで視界が紅く染まる
「ぎぃ、あああぁッ!!やめ、やめよ…っ!や、…っああああ゛っ!」
「貴様の叫び声は実に心地良い…此れを失った時の貴様の声を想像するだけで滾ってくる…っ」
傷を付けることは止めず再び律動を開始された 臓器が圧迫され器官が苦しく吐き気がする 三成の液体で充満している内壁の奥深くに突き上げられる 激しい結合に辛うじて残っていた意識が飛ぶ寸前 三成が我のモノに喰い付いて
喰い 千 切 ら れ る 音 が し た
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