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恐ろしい夢を見た
嫌な目覚め
背中が汗で湿っている
不安で何もかも全て消えてしまったかのようで
急いで部屋を出た
何時もの執務室へ行けば、張遼、陳宮、高順が酒を片手に碁盤を囲んでいる光景
なんて事無い、何時もの気休めの遊び
其の姿を見て、ホッとする
一気に脱力して、その場に崩れ落ちそうになった
「殿?どうなされたのですか…顔色が優れておらぬようですが…」
駆け寄って俺の額に触れる張遼の手が冷たくて気持ちいい
陳宮も珍しく寄って来た
「殿も過労、ですかね。戦ばっかりしているからですよ」
そう云いながらも優しい表情
「そうだ!殿も囲碁しませんか?たまには頭を働かせないとね」
からかう高順は俺の肩に手を置き、碁盤へ誘っている
今ここに居る人は、俺を心配している
「殿…行きましょう?」
あぁ、張遼
そんな表情で俺を見るな
あの夢は
あの夢でお前は其の細い首が紅く濡れていた
それでも俺に何か語りかけていた
愛しい身体をボロボロに壊しながら
濡れた唇から零れた言葉は誰に向けられていた?
夢の中で 陳宮、お前は
男にしては細すぎる腕が散っていた
軍師のくせに、何故戦場に出た?
…いや、違う
出ていても本陣にいて、其処は俺が守る…
しかし、なら如何して
お前は俺を見ている?
何時も無茶をして、陳宮に怒られていたな、高順
今回もそうなのか?
無茶が行き過ぎて、そんな姿になったのか?
お前の槍が深く突き刺さっているこの身体
お前の身体には俺の方天戟が引き裂いた傷跡が血潮を噴出しながら大きく残っている
お前は、俺を見て涙を流している
何故?
何故俺はお前を…
「如何成された殿!何時もの覇気がございませんぞ!」
見るな
張遼、頼む 俺をそんな目で見るな
陳宮、高順
頼む、俺は…
「殿?」
この心地よい場所に居てはいけない
抜け出せなくなる
依存してしまう
俺は、俺は…
紅く染まるお前たちが俺を見ている
助けが欲しいのか
止めがほしいのか
誰がやった
誰が…?
違う
誰が、じゃない、知っている
曹操?劉備?袁紹?
違う
お前たちを殺したのは
「我らで道を切り開きましょうぞ、呂布殿」
愛しい身体を抱く事も出来ず
嫌な夢を見た
ただその身体を引き裂いた
確かめる為に部屋を出た
他の奴に殺させやしない
其処にあった光景は
安心しろ、お前たちを殺すのは
何時もの執務室で、一面紅く
他でもない、この俺だ
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