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間合いが悪かったんだよ…ただ其れだけの事
このズキズキする気持ちは今は心地よい気分だよ
…自分に、言い聞かせる戒めとすれば、ね
孔明に農地の領土についてあっしに訊きたい事があるとの使いが来て、仕事が一段落着いたら来て欲しいと言われた
特に為るべき仕事は午前中に済ませてしまっているが、連絡来て早々行くとまるで呼ばれるのを待っていたみたいに思われてなんか嫌だ
だから、昼過ぎまで此処に篭って、今まで仕事をしていたようにして見せて、呼ばれたから来てやったってしてみせようとした
「あっしも末期かねぇ〜…」
と渋々感じる
何せ若き頃苦手で近寄りたくなかった孔明に、今では気になる相手…しかも行くところまでいっている仲
まさか此処に落ちるとは思いもしなかった
同じ蜀の軍師として迎えられあの時と同じままの相手と過ごしている
まぁ、蜀に来てからは孔明が結婚していて、綺麗な奥さんがいた事には驚いてケドね
あっしは何も変わらないさ
初夏の昼下がりは少し蒸し暑く、木陰に入ると光の当たる葉が光って見えて眩しい
廊下を通ってではなく、気分転換がてらに外からお邪魔させてもらおうと中庭を歩いていた
うつらうつらと眠たくなってくるのを抑えて、孔明の部屋の窓を叩こうとした
でも、其の光景を見て、出来なかった
……孔明と月英殿が、キスしていた
咄嗟に窓から離れようと足を動かすが、中々思い道理に動かない
二人の様子が目に焼け付く
熱いはずなのに冷や汗が出てきて、足が震える
映るは深く愛し合う夫婦の情事
己の立場が、浮き彫りにされて痛い…
離れたかった
でも、離れられなくて其の場にしゃがみ込んだ
一気に涙が溢れ、零れて行くのが情けなく、馬鹿だと…
「士元?灯りも点けずにどうしたのです…私の部屋にも来なかったでしょう…」
「こう、めい…」
いつの間にか辺りは暗く、仄かに青い光が部屋を満たしていた
あの場から逃げるように去り、自室にずっと篭っていたらしい
気が付けば、孔明が其処に居た
外からの光に当たり、孔明の顔が浮かぶと先程の光景が鮮明に表される
まともに見れない…
「士元…?何かあったのですか…?」
寄って来る足音。触れる手。重なり合った唇…
月英殿、と
「や、嫌だっ!!」
ぱしっ、と乾いた音が響く。孔明の手を、叩いていた
「…っあ、ごめ…っ」
怒られるか不安で、孔明の顔を覗いてみる
孔明は、笑っていた
「何ですか。其の可愛い反応は」
一気に引き寄せられて、抱き締められた
余りにも急な事でされるがままになってしまった
我に返ってみればとんでもない状況になっていて…
「孔明!!ななな、何すんだい!イキナリ」
「だって可愛い仕草しているんですよ?襲ってくださいって云っているようなもので…」
「お前さん何云ってんだい!!もう喋んないでおくれ!」
いけしゃしゃと恥ずかしい台詞を次々と云われて、もう真っ赤になってしまった
仕方なく孔明の腕の中に納まっていることにした
「何を見たのかは知りませんが、私は貴方と居れる事が倖せなんですよ?だから、私を避けないで。傷ついちゃいますからね?」
ぎゅっ、と力強く抱き締められて、軽く触れるようなキスをされた
翌日
あの後、事に流れて二人で寝台に沈み抱き合うように眠っていたらしい
ちょっと身体を起こして孔明の寝顔を見てみた
安心しきっているような無防備な寝息
あぁもう。こんな顔されちゃ云うに云えないじゃないか
あっしが如何して行かなかったのか…
頭の切れるお前さんの事だ。お前さん、本当は気付いているんじゃないかい?
あっしが彼女に嫉妬していて事を…
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